新たなステージへと導いてくれる僕の師匠
2013年に大本命だったTT160を諦めて購入したMagic38。
これまで丸3シーズン乗り込んだわけだが、毎度その圧倒的な安定感とキレのあるターンに酔いしれてしまう。
パウダーでもダブルピンテールが沈みこみ、ポイントノーズが雪を切り裂きながら雪面に顔を覗かせると、スピード感と浮遊感を同時に体感することになる。
まさに至福の時だ。
乗れば乗るほど、このラグジュアリーな乗り心地のMagicに惚れ込んでいく。
しかし、そこまでMagicに満足しながらも、一度諦めたTTに対する想いは消えることはなかった。
消えるどころかsnow surferとしてGENTEMのフラッグシップモデルであるTTを乗りこなしてみたいという思いが増すばかりだった。
2016年2月に16-17モデルが発表され、TTのグラフィックが自分の好みだったことで急激に購入意欲が湧いてしまった。
ご存知の通り、GENTEMはシーズン毎に各モデルのグラフィックは1種類のみ。
このタイミングを逃すと次またいつ自分好みのグラフィックに出逢えるのか分からない。
そう思うと購買意欲は増すばかりで、いつしかオーダーすることを前提に最終チェックを含め改めて試乗することばかりを考えていた。
そんなことを考えていた昨年2月は、ちょうどニセコへの家族旅行を予定していたので、まずはPOWDER CAMPANYのボードレンタル、そして2月後半に開催された16-17GENTEMSTICK COLLECTION CAMP in HAPPOBANKSでTT160を試乗した。
試乗した感想は、やっぱり難しいの一言に尽きた。
ちょっとしたギャップで板の挙動は乱れ、少し荷重のタイミングを外しただけでバランスを崩す。
それでも一度火のついた僕の購買意欲は消えることはなく、2度の試乗を終えた後すぐにオーダーを入れた。
こうして恋焦がれたTT160を手に入れ、迎えた今シーズン。
初乗りこそ乗り慣れたMagic38に譲ったが、それ以降はMagicを封印し、12日間さまざまなコンディションで乗り込んできた。
シーズン序盤は、これまでの自分のライディングを否定されるが如く、コテンパンにやられた。
Magicであれば必要に応じて自分の技量不足を補ってくれて、それなりにノレていたわけだが、『TT師匠』はそんなに甘くはなかった。
それでも厳しい『TT師匠』に食らいつき、一本また一本と滑るうちに少しづつだがノレるようになっていった。
そしてTTに乗り込んでいくうちに、今まで抱いていた「不安定」とか「ジャジャ馬」という印象が少し違うということがわかってきた。
もちろんフラットキャンバーであるが故に雪面の凹凸などは板が吸収してくれるはずはなく、膝を柔軟に使う必要があるわけだが、そのようにコンディションに見合った乗り方をすれば、決して不安定ということはない。
TTが不安定なのではなく、雪面やコンディションの変化に対し、自分が敏感に対応できていないだけだ。TTは良くも悪くもライダーの乗った通りに動くのだ。
そういう意味では非常にシビアな板であることに変わりはない。ライディング時の集中力は不可欠であり、それが切れた時にはまったくコントロールが効かなくなる。
真剣に向き合うほどに、それに応えてくれる板なのだ。真剣に向き合えば、板から発せられるメッセージを感じ取ることができ、ノレていない時は“違和感”という形でそのことを教えてくれる。
例えば、ターンの後半に後脚へ荷重をシフトしていくと、荷重をかけるほどにターンが切れていくのだが、一定のラインを超えるとテールがズリッと滑るのだ。それも数センチ程度のズレで、恐らく見ている人は気付かないレベルだ。そのズレのタイミングを何度か経験しながらターン時の荷重の仕方を感覚的に覚えていく。
まるで玉井太郎氏がTTを通じてライディングの基礎から真髄に至るまで教えてくれているかのようだ。
エッジに頼り過ぎてターンをするといきなり不安定になり、かといって面で捉えすぎるとルースになる。
玉井太郎氏は雑誌などで「エッジに乗るのではなく、面で雪面を踏むことを意識する」と言っているが、この意味が少しだけだが分かったような氣がする。
いまはターンが楽しくてしょうがない。
というより、ターンを学ぶのに精一杯だ。
以前は、TTはウォールでテールがスムースに流れて調子が良いなんて思ったが、今思えばとんでもない間違いだった。
とてもじゃないが、ウォールでの滑りを語れるレベルにまったく到達していないと感じる。
しかし、『TT師匠』の厳しくも暖かい指導のお陰で今までにないほど深いターンができるようになってきた。
ターンにおいては確実に上達していると感じる。
TT160が僕の滑りを新たなステージに導いてくれているのは間違いない。
どこまでもついていきます。
TT師匠。